無料でしっかり基礎固め!高校物理 問題演習「コンデンサーの合成と耐電圧」【高校物理対応】

問題の確認

electromagnetic#22

各設問の思考プロセス

この問題は、コンデンサーの「耐電圧」という、現実の部品の性能限界を考慮した回路の問題です。耐電圧とは、そのコンデンサーが壊れずに耐えられる最大の電圧のことです。全体の耐電圧は、回路全体の電圧を0から徐々に上げていったときに、最初にいずれかのコンデンサーが自身の限界に達した時点での全体の電圧となります。

この問題を解く上で中心となる物理法則は以下の通りです。

  • 並列接続の性質: 各コンデンサーにかかる電圧は等しい
  • 直列接続の性質: 各コンデンサーに蓄えられる電気量は等しい
  • 最大電気量: 各コンデンサーが蓄えられる最大の電気量 \(Q_{\text{最大}}\) は \(Q_{\text{最大}} = C \times V_{\text{最大}}\) で計算できる。

この問題を解くための手順は以下の通りです。

  1. 各コンデンサーの最大電気量を計算する:
    まず、後の計算のために、AとBがそれぞれ蓄えられる最大の電気量 \(Q_{A, \text{最大}}\) と \(Q_{B, \text{最大}}\) を計算しておきます。
  2. (1) 並列接続の場合を考える:
    並列接続では、両方のコンデンサーに同じ電圧がかかります。したがって、全体の耐電圧は、個々の耐電圧の小さい方で決まります。
  3. (2) 直列接続の場合を考える:
    直列接続では、両方のコンデンサーに同じ電気量が蓄えられます。したがって、回路全体で蓄えられる最大の電気量は、個々の最大電気量の小さい方で決まります。その最大の電気が蓄えられたときに、各コンデンサーにかかる電圧をそれぞれ計算し、それらを合計したものが全体の耐電圧となります。

各設問の具体的な解説と解答

準備:各コンデンサーの最大電気量の計算

各設問を解く前に、コンデンサーAとBがそれぞれ蓄えることができる最大の電気量を計算しておきます。これは特に(2)の直列接続を考える際に重要になります。

コンデンサーAの最大電気量 \(Q_{A, \text{最大}}\)

$$
\begin{aligned}
Q_{A, \text{最大}} &= C_A V_{A, \text{最大}} \\[2.0ex]&= (4.0 \times 10^{-6} \, \text{F}) \times (3.0 \times 10^2 \, \text{V}) \\[2.0ex]&= 12 \times 10^{-4} \, \text{C} \\[2.0ex]&= 1.2 \times 10^{-3} \, \text{C}
\end{aligned}
$$

コンデンサーBの最大電気量 \(Q_{B, \text{最大}}\)

$$
\begin{aligned}
Q_{B, \text{最大}} &= C_B V_{B, \text{最大}} \\[2.0ex]&= (1.0 \times 10^{-6} \, \text{F}) \times (6.0 \times 10^2 \, \text{V}) \\[2.0ex]&= 6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}
\end{aligned}
$$

(1) AとBを並列に接続したときの全体としての耐電圧 \(V_{1}[V]\) を求めよ。

問われている内容の明確化
AとBを並列に接続した回路全体にかけることができる最大の電圧 \(V_1\) を求めます。

具体的な解説と立式
並列接続では、コンデンサーAにかかる電圧 \(V_A\) とコンデンサーBにかかる電圧 \(V_B\) は、回路全体にかけた電圧 \(V_1\) と等しくなります。
$$V_A = V_B = V_1$$
コンデンサーAは \(300\,\text{V}\) まで、コンデンサーBは \(600\,\text{V}\) まで耐えられます。
もし回路全体の電圧 \(V_1\) を \(300\,\text{V}\) より大きくすると、Aが耐えられずに破壊されてしまいます。
したがって、回路全体としての耐電圧は、AとBのうち耐電圧が低い方によって制限されます。
$$V_1 = \min(V_{A, \text{最大}}, V_{B, \text{最大}}) \quad \cdots ①$$
(\(\min(a,b)\)はaとbのうち小さい方の値を表します)

使用した物理法則:

並列接続の性質: \(V_A = V_B = V_{\text{全体}}\)

計算過程
式①に具体的な値を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_1 &= \min(300 \, \text{V}, 600 \, \text{V}) \\[2.0ex]&= 300 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
有効数字を考慮すると \(3.0 \times 10^2 \, \text{V}\) となります。

計算方法の平易な説明

  • 並列接続では、2つのコンデンサーに全く同じ電圧がかかります。
  • Aは300Vまで、Bは600Vまで耐えられます。
  • もし300Vより少しでも大きな電圧をかけると、Aが先に壊れてしまいます。Bはまだ大丈夫ですが、回路としては成り立ちません。
  • したがって、安全にかけられる電圧の上限は、より低い方の300Vとなります。

この設問における重要なポイント

  • 並列接続では電圧が共通であることを理解していること。
  • 全体の性能は、最も弱い部品によって制限される「ボトルネック」の考え方を適用すること。
解答 (1):
\(3.0 \times 10^2 \, \text{V}\)

(2) AとBを直列に接続したときの全体としての耐電圧 \(V_{2}[V]\) を求めよ。

問われている内容の明確化
AとBを直列に接続した回路全体にかけることができる最大の電圧 \(V_2\) を求めます。

具体的な解説と立式
直列接続では、各コンデンサーに蓄えられる電気量 \(Q\) が等しくなります。
$$Q_A = Q_B = Q_{\text{全体}}$$
回路全体の電圧を上げていくと、この \(Q\) が増加していきます。そして、どちらかのコンデンサーが自身の蓄えられる最大電気量 \(Q_{\text{最大}}\) に達した時点で、回路は限界を迎えます。
準備の計算より、

  • Aの最大電気量: \(Q_{A, \text{最大}} = 1.2 \times 10^{-3} \, \text{C}\)
  • Bの最大電気量: \(Q_{B, \text{最大}} = 6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}\)

比較すると、Bの最大電気量の方が小さいです。したがって、Bのコンデンサーが先に限界に達します。
回路全体として安全に蓄えられる最大の電気量 \(Q_{\text{最大}}\) は、
$$Q_{\text{最大}} = \min(Q_{A, \text{最大}}, Q_{B, \text{最大}}) = 6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}$$
となります。
この最大の電気が蓄えられているときに、AとBそれぞれにかかっている電圧を \(V_A’\), \(V_B’\) とすると、
$$V_A’ = \frac{Q_{\text{最大}}}{C_A} \quad \cdots ②$$
$$V_B’ = \frac{Q_{\text{最大}}}{C_B} \quad \cdots ③$$
回路全体の耐電圧 \(V_2\) は、これらの電圧の和になります。
$$V_2 = V_A’ + V_B’ \quad \cdots ④$$

使用した物理法則:

  1. 直列接続の性質: \(Q_A = Q_B = Q_{\text{全体}}\)
  2. コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
  3. 直列接続における電圧の関係: \(V_{\text{全体}} = V_A + V_B\)

計算過程
まず、限界となる電気量は \(Q_{\text{最大}} = 6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}\) です。
このときの各コンデンサーの電圧を式②、③から計算します。
$$
\begin{aligned}
V_A’ &= \frac{6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}}{4.0 \times 10^{-6} \, \text{F}} \\[2.0ex]&= 1.5 \times 10^2 \, \text{V} = 150 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
$$
\begin{aligned}
V_B’ &= \frac{6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}}{1.0 \times 10^{-6} \, \text{F}} \\[2.0ex]&= 6.0 \times 10^2 \, \text{V} = 600 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
このとき、\(V_A’ = 150\,\text{V}\) はAの耐電圧 \(300\,\text{V}\) より小さく、\(V_B’ = 600\,\text{V}\) はBの耐電圧 \(600\,\text{V}\) とちょうど等しくなっており、Bが限界点であることが確認できます。

最後に、式④を用いて全体の耐電圧 \(V_2\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
V_2 &= V_A’ + V_B’ \\[2.0ex]&= 150 \, \text{V} + 600 \, \text{V} \\[2.0ex]&= 750 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
有効数字を考慮すると \(7.5 \times 10^2 \, \text{V}\) となります。

計算方法の平易な説明

  • 直列接続では、2つのコンデンサーに同じ量の電気がたまります。
  • Aは最大1200\(\mu\)C、Bは最大600\(\mu\)Cまで電気をためられます。
  • 両方に同じ量がたまっていくので、先に限界が来るのは、ためられる量が少ないBの方です。つまり、回路全体でも600\(\mu\)Cまでしかためられません。
  • 回路全体に600\(\mu\)Cの電気がたまっているとき、AとBのそれぞれの電圧を計算します。
    • Aの電圧 = 600\(\mu\)C / 4.0\(\mu\)F = 150V
    • Bの電圧 = 600\(\mu\)C / 1.0\(\mu\)F = 600V
  • 全体の電圧は、この2つの電圧の合計なので、150V + 600V = 750V となります。これが全体の耐電圧です。

この設問における重要なポイント

  • 直列接続では「電気量」が共通であるため、どちらが先に「最大電気量」に達するかで限界が決まること。
  • 全体の耐電圧は、限界時の各コンデンサーの電圧の「和」になること。
解答 (2):
\(7.5 \times 10^2 \, \text{V}\)

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問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則

  • 耐電圧と最大電気量: 耐電圧は部品の性能限界を示す値。これから、コンデンサーが安全に蓄えられる最大の電気量 \(Q_{\text{最大}}=CV_{\text{最大}}\) が計算できる。
  • 直列・並列接続の基本性質:
    • 並列: 電圧が共通。全体の耐電圧は、個々の耐電圧の最小値で決まる。
    • 直列: 電気量が共通。全体の耐電圧は、個々の最大電気量の最小値に達したときの、各電圧の和で決まる。
  • ボトルネックの考え方: 回路全体の性能や限界は、最も弱い(あるいは先に限界に達する)部品によって決定される、という考え方は物理の様々な場面で重要です。

類似の問題を解く上でのヒントや注意点

  • 最初に最大電気量を計算する: この種の問題では、まず各コンデンサーの \(Q_{\text{最大}}\) を計算しておくことが、特に直列接続の場合を考える上で非常に有効です。
  • どちらが先に限界に達するかを判断する:
    • 並列の場合 → \(V_{\text{最大}}\) を比較する。
    • 直列の場合 → \(Q_{\text{最大}}\) を比較する。
  • 限界時の状態を考える: どちらかの部品が限界に達した瞬間の回路を考え、そのときの全体の電圧を計算することが求められます。

よくある誤解や間違いやすいポイント

  • 直列接続の耐電圧の誤解: 直列接続の耐電圧を、単純に個々の耐電圧の和 (\(300+600=900\,\text{V}\)) で計算してしまうのは典型的な間違いです。電圧は容量の逆比で分圧されるため、耐電圧が低い方が先に壊れるとは限りません。
  • 比較する物理量の混同: 直列接続の場合に、\(Q_{\text{最大}}\) ではなく \(V_{\text{最大}}\) を比較してしまうミス。直列接続では電気量が共通なので、電気量の上限で考える必要があります。
  • 分圧の計算ミス: 直列接続では、電気容量が小さい方により大きな電圧がかかります(\(V=Q/C\)のため)。この関係を逆に考えてしまうと、どちらが先に限界に達するかの判断を誤ります。

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