問題の確認
electromagnetic#21各設問の思考プロセス
この問題は、直列接続と並列接続が混在したコンデンサー回路について、合成容量、各部分の電圧、各コンデンサーの電気量を求める総合的な問題です。このような複合回路は、部分ごとに単純化(合成)していくのが解法の定石です。
この問題を解く上で中心となる物理法則は以下の通りです。
- コンデンサーの並列接続: 合成容量は単純な和 (\(C_{\text{並列}} = C_a + C_b\))。各コンデンサーの電圧は等しい。
- コンデンサーの直列接続: 合成容量の逆数が、各容量の逆数の和 (\(\frac{1}{C_{\text{直列}}} = \frac{1}{C_a} + \frac{1}{C_b}\))。各コンデンサーの電気量は等しい。
- コンデンサーの基本式: \(Q = CV\)
この問題を解くための手順は以下の通りです。
- (1) 合成容量の計算: まず、回路図を見て、最も単純な組み合わせである\(C_2\)と\(C_3\)の並列部分を合成し、一つのコンデンサー\(C_{23}\)と見なします。次に、その\(C_{23}\)が\(C_1\)と直列に接続されていると考えて、回路全体の合成容量\(C\)を計算します。
- (2), (3) 電圧の計算: まず、回路全体で蓄えられる総電気量\(Q_{total}\)を、(1)で求めた全体の合成容量\(C\)と電源電圧\(V\)から計算します (\(Q_{total}=CV\))。
- \(C_1\)は、この総電気量\(Q_{total}\)がそのまま流れるので\(Q_1=Q_{total}\)です。これを使って\(V_1\)を計算できます。
- 全体の電圧\(V\)が\(V_1\)と\(V_2\)に分圧されるので、\(V_2\)は\(V – V_1\)で計算できます。
- (4) 各電気量の計算:
- \(Q_1\)は、(2)の計算過程で求めた\(Q_{total}\)です。
- \(C_2\)と\(C_3\)には共通の電圧\(V_2\)がかかるので、それぞれ\(Q_2=C_2V_2\), \(Q_3=C_3V_2\)として計算します。
各設問の具体的な解説と解答
(1) ad間の合成容量 C
問われている内容の明確化
回路全体の合成容量 \(C\) を求めます。
具体的な解説と立式
ステップ1: 並列部分の合成容量 \(C_{23}\) を求める
\(C_2\) と \(C_3\) は並列に接続されているため、その合成容量 \(C_{23}\) は単純な和で表されます。
$$C_{23} = C_2 + C_3 \quad \cdots ①$$
ステップ2: 回路全体の合成容量 \(C\) を求める
この \(C_{23}\) と \(C_1\) は直列に接続されています。したがって、回路全体の合成容量 \(C\) は、逆数の和で計算します。
$$\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_{23}} \quad \cdots ②$$
使用した物理公式:
- 直列接続: \(\displaystyle\frac{1}{C_{\text{直列}}} = \frac{1}{C_a} + \frac{1}{C_b}\)
- 並列接続: \(C_{\text{並列}} = C_a + C_b\)
計算過程
まず、式①を用いて \(C_{23}\) を計算します。(\(C_2=2.0\,\mu\text{F}, C_3=4.0\,\mu\text{F}\))
$$
\begin{aligned}
C_{23} &= 2.0 \, \mu\text{F} + 4.0 \, \mu\text{F} \\[2.0ex]&= 6.0 \, \mu\text{F}
\end{aligned}
$$
次に、式②に \(C_1 = 3.0 \, \mu\text{F}\) と \(C_{23} = 6.0 \, \mu\text{F}\) を代入して、全体の合成容量 \(C\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
\frac{1}{C} &= \frac{1}{3.0} + \frac{1}{6.0} \\[2.0ex]&= \frac{2}{6.0} + \frac{1}{6.0} \\[2.0ex]&= \frac{3}{6.0} \\[2.0ex]&= \frac{1}{2.0}
\end{aligned}
$$
最後に逆数をとって、
$$ C = 2.0 \, \mu\text{F} $$
計算方法の平易な説明
- まず、並列になっている\(C_2\)と\(C_3\)を合成します。並列の場合は単純な足し算なので、\(2.0 + 4.0 = 6.0 \, \mu\text{F}\)です。
- 次に、この\(6.0 \, \mu\text{F}\)のコンデンサーと\(C_1=3.0 \, \mu\text{F}\)が直列になっていると考えます。直列の場合は逆数を足すので、「1/3.0 + 1/6.0」を計算して「1/2.0」となります。
- 最後に逆数に戻すと、全体の合成容量は \(2.0 \, \mu\text{F}\) となります。
この設問における重要なポイント
- 複雑な回路は、単純な部分(並列や直列)に分けて段階的に合成していくこと。
\(2.0 \, \mu\text{F}\)
(2) ab間の電位差 \(V_{1}\)
問われている内容の明確化
コンデンサー \(C_1\) にかかる電圧 \(V_1\) を求めます。
具体的な解説と立式
まず、回路全体で蓄えられる総電気量 \(Q_{total}\) を求めます。これは、(1)で求めた全体の合成容量 \(C\) と電源電圧 \(V\) から計算できます。
$$Q_{total} = C V \quad \cdots ③$$
\(C_1\) は、この合成コンデンサーの直列部分を構成しているため、\(C_1\)に蓄えられる電気量 \(Q_1\) は、この総電気量 \(Q_{total}\) に等しくなります。
$$Q_1 = Q_{total}$$
したがって、\(C_1\)にかかる電圧 \(V_1\) は、基本式 \(Q_1 = C_1 V_1\) を変形して求められます。
$$V_1 = \frac{Q_1}{C_1} \quad \cdots ④$$
使用した物理公式:
- コンデンサーの基本式: \(Q=CV\)
- 直列接続の性質: 各コンデンサーの電気量は等しい。
計算過程
まず、式③を用いて総電気量 \(Q_{total}\) を計算します。
$$
\begin{aligned}
Q_{total} &= (2.0 \, \mu\text{F}) \times (300 \, \text{V}) \\[2.0ex]&= 600 \, \mu\text{C} \\[2.0ex]&= 6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}
\end{aligned}
$$
この値が \(Q_1\) となるので、式④に代入して \(V_1\) を計算します。(\(C_1 = 3.0\,\mu\text{F} = 3.0\times 10^{-6}\,\text{F}\))
$$
\begin{aligned}
V_1 &= \frac{6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}}{3.0 \times 10^{-6} \, \text{F}} \\[2.0ex]&= 2.0 \times 10^{-4 – (-6)} \, \text{V} \\[2.0ex]&= 2.0 \times 10^2 \, \text{V} \\[2.0ex]&= 200 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
200 V
(3) bc間の電位差 \(V_{2}\)
問われている内容の明確化
\(C_2\) と \(C_3\) の並列部分にかかる電圧 \(V_2\) を求めます。
具体的な解説と立式
\(C_1\) と並列部分(合成容量\(C_{23}\)) は直列に接続されているため、それぞれの電圧の和が全体の電圧 \(V\) になります。
$$V = V_1 + V_2$$
この式を \(V_2\) について解きます。
$$V_2 = V – V_1 \quad \cdots ⑤$$
$$V_{\text{全体}} = V_a + V_b$$
計算過程
式⑤に、\(V=300\,\text{V}\) と (2)で求めた \(V_1=200\,\text{V}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
V_2 &= 300 \, \text{V} – 200 \, \text{V} \\[2.0ex]&= 100 \, \text{V}
\end{aligned}
$$
100 V
(4) コンデンサー \(C_{1}\), \(C_{2}\), \(C_{3}\) のそれぞれにたくわえられる電気量 \(Q_{1}\), \(Q_{2}\), \(Q_{3}\)
問われている内容の明確化
3つのコンデンサーそれぞれに蓄えられている電気量を求めます。
具体的な解説と立式
- \(Q_1\): (2)の計算過程で求めた総電気量 \(Q_{total}\) に等しいです。
- \(Q_2\): \(C_2\) にかかる電圧は、並列部分の電圧である \(V_2\) です。
$$Q_2 = C_2 V_2 \quad \cdots ⑥$$ - \(Q_3\): \(C_3\) にかかる電圧も、同じく \(V_2\) です。
$$Q_3 = C_3 V_2 \quad \cdots ⑦$$
計算過程
- \(Q_1\): (2)の計算過程より、
$$ Q_1 = Q_{total} = 600 \, \mu\text{C} = 6.0 \times 10^{-4} \, \text{C} $$ - \(Q_2\): 式⑥に \(C_2 = 2.0 \, \mu\text{F}\) と (3)で求めた \(V_2=100\,\text{V}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
Q_2 &= (2.0 \, \mu\text{F}) \times (100 \, \text{V}) \\[2.0ex]&= 200 \, \mu\text{C} \\[2.0ex]&= 2.0 \times 10^{-4} \, \text{C}
\end{aligned}
$$ - \(Q_3\): 式⑦に \(C_3 = 4.0 \, \mu\text{F}\) と \(V_2=100\,\text{V}\) を代入します。
$$
\begin{aligned}
Q_3 &= (4.0 \, \mu\text{F}) \times (100 \, \text{V}) \\[2.0ex]&= 400 \, \mu\text{C} \\[2.0ex]&= 4.0 \times 10^{-4} \, \text{C}
\end{aligned}
$$
吟味(検算)
点bに流れ込んだ電荷 \(Q_1\) が、\(Q_2\) と \(Q_3\) に分かれたと考えることができます。電荷保存則より \(Q_1 = Q_2 + Q_3\) が成り立つはずです。
\(Q_2 + Q_3 = 200 \, \mu\text{C} + 400 \, \mu\text{C} = 600 \, \mu\text{C}\)。これは \(Q_1\) の値と一致しており、計算は整合性がとれています。
\(Q_1 = 6.0 \times 10^{-4} \, \text{C}\)
\(Q_2 = 2.0 \times 10^{-4} \, \text{C}\)
\(Q_3 = 4.0 \times 10^{-4} \, \text{C}\)
▼別の問題もチャレンジ▼
問題全体を通して理解しておくべき重要な物理概念や法則
- コンデンサーの合成容量:
- 直列接続: 電気容量の逆数の和 (\(\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1}+\frac{1}{C_2}\))。
- 並列接続: 電気容量の単純な和 (\(C = C_1+C_2\))。
- 直列・並列での電圧・電気量の関係:
- 直列: 各コンデンサーの電気量 \(Q\) が等しい。電圧は分圧される。
- 並列: 各コンデンサーの電圧 \(V\) が等しい。電気量は分流する。
- 回路の単純化: 複雑な回路も、部分的な直列・並列のかたまりを見つけて合成していくことで、単純な回路に置き換えて考えることができる。
類似の問題を解く上でのヒントや注意点
- 図を描いて考える: 複雑な回路は、どの部分が直列でどの部分が並列なのかを図で確認しながら、少しずつ合成していくのが定石です。合成した部分を一つのコンデンサーとして図を書き直すと、次のステップが考えやすくなります。
- まず合成容量、次に総電荷: 回路全体の合成容量を求め、次に電源から流れ出る総電荷を求める、という手順が最も基本的な解法です。総電荷がわかれば、それを各部分に分配していくことができます。
- 検算: (4)のように、電荷保存則 (\(Q_1 = Q_2+Q_3\)) や電圧則 (\(V=V_1+V_2\)) が最終的な答えで成り立っているかを確認することで、計算ミスを発見できます。
よくある誤解や間違いやすいポイント
- 直列と並列の公式の混同: 抵抗の合成公式と逆の形をしているため、混同しやすいです。コンデンサーは「並列」にすると極板面積が増えるのと同じ効果なので容量は「和」になる、とイメージで覚えるのがおすすめです。
- 直列なのに電圧が等しいと考えるミス: 直列接続では、電気容量が異なる場合、かかる電圧も異なります。電気容量の逆比に分圧されます。
- 並列なのに電気量が等しいと考えるミス: 並列接続では、かかる電圧が同じです。電気量は \(Q=CV\) なので、電気容量が異なる場合は蓄えられる電気量も異なります。電気容量の比に分流します。
▼別の問題もチャレンジ▼